イギリス人の道2 7月6日(水) ネダ - ミーニョ

 ネダのアルベルゲを7時5分に出発する。暫くは海岸沿いの遊歩道を歩いていき快適。そこを過ぎると急坂が現れる。北の道でいっぱい経験したが、やはり海岸沿いの道と言うのは常に上り下りを繰り返している。少ないが数人のペリグリノに出会う。

 漁村のような村に入って来たところでカミーノを見失う。見失うどころか今回は行き止まりになってしまった。こうなったら戻るしかない。そしたら朝の漁を終えたところらしき漁師さんが、カミーノはあっちだと教えてくれる。都会と比べ、田舎の人はカミーノを知っている人が多いので助かる。

 人家もまばらな田舎道を歩いていると、道の隅っこで何やら動いている小動物が目に留まる。近づいてみたら何とハリネズミだった。えーっ、スペインって野生のハリネズミが居るところなの!?ハリネズミは近づいても逃げないので、どこか具合が悪いようだ。かと言って連れてく訳にも行かない。やって来た地元の人に、こんなんがいるけどと指差してみたが、別に!と言う感じで素通りしてしまった。この辺りでハリネズミは珍しくないのかな?ネズミと言う名前が付くので、日本で言ったらドブネズミくらいの低い位置づけなんか?

 10時半に海沿いの町、Cabanasにでる。道案内にしていたカップルはこの町に泊まるのか、巡礼路から外れて海岸の方に行ってしまった。歩きながらいっぱい写真を撮っていたり、のんびりしていたのでペースメーカーとして調度良かったんだがなぁ。この町は海岸沿いが良く整備されている町で、観光客や海水浴客が訪れる町なのだろう。アルベルゲはないようだがホテルなどは沢山ありそうな小洒落た町だった。海岸近くの松林の傍を歩いて行くと道端のところどころにベンチが設置してあるので座らせてもらい、バックパックから出した1リットルジュースをぐびぐび飲んでおく。


 大きな町のPonte de Umeに入るには、大きな橋を渡っていく。この橋の根元は自然の岩で出来ている消波ブロックみたいのが沢山積まれていて、それが境目になって右側は海、左側は干潟になっていた。干満の差で今の時間は干潟から海側に海水が音を立てて勢い良く流れ込んでいる。ちょっと見たことのない不思議な光景だな。十戒の海割れみたい。もしかしたら、この干満の差を利用して閉じ込められた魚を捕っているのかな。

 橋を渡り終えたところで巡礼路を見失う。あれーと辺りを見回していたら、目の前のバルで一杯やっている女性軍は足もとにバックパックを置いたペリグリノだった。でもこの人たちに聞いても巡礼路は知らなかった。今日はこの町にあるアルベルゲに泊まるんだとのこと。まだオープンまでには相当あるそうだ。しかもここのアルベルゲは何とか言う人の家に電話して鍵を貸してもらい、自分で開けるんだと面倒なことを言っている。どうしたもんかな。今後の行程を考えると、ここで泊まった場合、次ぐ日はBetanzosまでの21.8km、その後はBrumaまでの28.3kmが手ごろな気がするが、鍵が面倒なので「I'm going goto minyo」と言ってご婦人方とはバイバイする。

 ご婦人方が「あっちじゃないの?」と教えてくれた巡礼路は間違っていた。歩いて行くと道端に矢印を見つけられたので、それに従い町の中の急坂を上っていく。良くこんな急坂を町の中に作ったもんだなと呆れるほどの急坂だ。車がやってきたのでその上り方を見ていたけど普通に上っていた。スリップして尻を振りながら上っていくのを期待したんだが。

 広場に出たところでまた巡礼路を見失ってしまった。都会あるあるだ。町の人に聞いてもハッキリしたことが分からない。困ったなと思っていたら調度そこへ昨日のアルベルゲで一緒だった親子(父と男の子)が通りかかったので、これ幸いと町を抜けるまで付いて行く。
 その後の山の中には小さな川を渡る橋が何か所もあって、渡り始めるとガタガタと揺れ出したのでビックリした。今にも崩れ落ちそうな橋だったので、こんな所で落っこちて旅が続けられなくなったんじゃたまらん。写真で見るとそれほどに見えないが、渡してある板は乗るとグラグラして落ちそうだった。

 目的の町、ミーニョに到着。アルベルゲは巡礼路から大分外れたところにあった。町の中の三叉路に巡礼路を示す黄色い矢印に加え、「A」付きの矢印が現れたのでそこだけは間違うことがなかった。AはアルベルゲのAだから。でも、そこから少し歩いた所でまた分からなくなってしまったので、今回もGPSのお世話になる。
 1時半、アルベルゲに到着。隣が消防署なので、前にもあった消防署が管理しているアルベルゲのようだ。扉のガラスには「開いている」と書かれた紙が張られているがオスピタレロは誰もいない。だから「開いている」なんか。ここも勝手にベッドを確保してシャワーなどを浴びていい方式らしいので気楽でいい。ベッドルームにはバックパックが置かれているので先着が二人いるようだがどっかに買い物に行っているらしく姿が見えない。この大きな家に私一人が自由に歩き回ってシャワーまで浴びている。普通に考えたら凄く妙ちくりんなことをやっているな。洗濯もして入り口の木に渡してあるロープに干しておく。

 ここは町から10分ほど離れてポツンとあるアルベルゲなので、すっごく暑い中を日陰を伝いながらスーパーへ行く。途中で向こうからやってくる親子と遭遇。あの先着二人分は、やっぱりこの親子だったようだ。お互いに顔見知りになっているので「オラ」と挨拶を交わす。

 時間が心配だったが、スーパーはシエスタをやってなかったので良かった。でも1リットルビールは冷えていなかった残念。今日もヨーグルト4にバケツ野菜、それにカット西瓜も買ってみる。買い物がどうもワンパターン化しているが仕方ない。誰かに簡単に食べられる新しい食材を教えてもらいたいな。明日の朝用にエンパナダまで買って7ユーロちょっと。

 アルベルゲには冷蔵庫がないので水道の水をちょろちょろ出しっぱなしにしてビールを冷やす作戦にする。キッチンは写真のとおり立派なのだが、ここも調理器具は置いてなかった。でも、コップが1つだけあったのでビールはコップから飲むことができた。皿でもコップでも、なにかひとつだけでも食器が置いてあると食事っぽくなって嬉しい。

 大きくてきれいなアルベルゲなのに6時を過ぎても誰もやってこず、いまいる3人だけだ。昨日のネダには十数人が泊まっていたので、ここまでやって来れたのはたった3人か!?この次にアルベルゲがあるのは11.8km先のベタンソスだけなので、イギリス人の道のショートコースで一日に36kmも歩くはずないだろう。という事は、ほとんどの人たちはネダから14kmのPonte de Umeに泊まったのかも知れないな。と書いていたらネダで一緒だった女の子3人組がやって来た。これでやっと6人。女の子達はベッド数が少ない小部屋に陣取れたのでご機嫌のようだ。

 親子に明日はどこまで行くのかと聞いたら、プレセドと即座に言ったのでプレセドのアルベルゲを知っているようだ。だったら私もそうしよう。ジョ タンビエン(自分もそうする)と伝える。これで明日、明後日の予定が立った。やっぱり言葉が不自由でも積極的に声を掛けると良いことがいっぱいある。親子はスーパーで買ってきたもので夕飯を食べ始めた。パッと見、父親は歳げだったので孫と歩いているのかと思ったが、近くで見たらまだ若い人だった。

 夕食の後、外のベンチで親子が寛いでいたので、頑張って歩いている少年にマリアカードを上げる。それが縁でいろいろ話すようになる。この人の英語は私以下だったので、変な英語と変なスペイン語で会話をしていく。この人は教師だった。名前はホワンパブロで子供はハイメ。ホワンはお返しにサンチャゴのカードをくれたので、裏に名前を書いてもらう。

 ホワンは何と7人の子持ちで上が27で下は5歳だそうだ。連れている子供は11歳らしかった。子供がこの年になると毎回サンチャゴ巡礼に連れ出しているのだろうか?そのことを聞いてみたいが、そこまでのスペイン語を使えない。学校では数学、科学と宗教を教えているそうだ。連れている子供はなんと同じ学校に通っているって。日本でもなくはないが、スペインではそれが普通なんか?

 8時に女の子3人組が買い物から帰ってきた。これから仕入れたもので夕飯にするらしい。明日はどこまで行くのか聞いたら、やっぱりプレセドだそうだ。自分も同じだと言ってみる。ホワンが女の子に教えてもらったのか、ここの受付は10時にやってくると言っている。10時~っ、一眠りしてからだな。しかし、一眠りして起きたら真っ暗で、既に12時になっていた。みんなはチェックインできたのだろうか?


イギリス人の道3へつづく